センサー地獄の先にあるもの

1対4の人員配置が2021年12月21日の日経新聞に大きく報道されました。

これを可能にするのがセンサーなどのIT機器とあります。

で、このセンサーなのですが、正直使い方に結構コツがあります。このコツを分からないと、表題にある「センサー地獄」が始まります。

目次

センサー地獄とは?

私がよく使っていたのは、ベッドの足元に置くタイプのいわゆる「センサーマット」というものでした。他にベッドパッドの下に忍ばせ、離れたら反応するタイプや圧がかかったら反応するタイプのものもありました。

よくある使い方として、歩行で転倒リスクがある方に、ベッドに臥床し自力でトイレなどに行こうとした際に、ベッドから起き上がる動作上にこれらセンサーを設置して、歩行の付添い介助などを可能にする、というものです。

が、この「転倒を予防するために使う」という方法で色々なご入居者にセンサーマットなどを使用すると、えらいことになります。

そう、「センサー地獄」の始まりです。

これは想像するのが簡単なのですが、センサーが多ければ多いほど、あちこちでセンサーが反応します。同時に別々の部屋のセンサーが反応するなんてのはザラです。

そして、これを対応するのはスタッフで「人」です。特に夜勤となると、人員が少なく、対応するのは非常に困難です。

このセンサー、、、管理する側としては使い勝手が良いです。とりあえず「転倒予防の対応をしている」となるからです。でも、ピーピーなるセンサーにいちいち対応する現場スタッフからしてみれば、「都度都度確認を強制させられる面倒な装置」です。

ゼロリスクは不可能が前提で考える

なので、私は常に「どうやったらセンサーを外すことができるか?」を考えていました。例えば、動線に家具や椅子を設置し常に何かを掴みながら移動できるようにする、ということです(基本この対応でほぼ足元センサーは外せました)。足元センサーが不必要になれば、居室から出てきた時だけわかるようにするようにセンサーを設置し、居室から出た時だけ反応するようにする、、、といった具合に、「センサーが本当に必要な場面で反応する仕組み」を工夫しながら行なっていました。

もちろんご入居者やその家族に対しての説明も重要です。ケアプランには必ず「転倒を予防するために様々な施策は行いますが、それでも転倒はします。」というような文言は載せ、転ぶ時は転ぶ、ということを伝えるようにしていました。(正直それが納得できないなら入居は無理です、、、というのも伝えていました、、、)

もっともっと科学が進歩して「このセンサーが反応した場合、転倒確率50%」みたいなものが出来れば、全員にセンサーを設置でも良いです。が、2021年12月現在、そんなものは存在していません。

これは他の日本の分野にも言えることなのですが、「リスクゼロ(=転倒ゼロ)を目指す」のではなく、「起きるリスク(=転倒)に対して、どう適切に素早く対応し、被害を小さくするか?を目指す」ようなマインドになって欲しいと、つくづく思っています。

冒頭の日経新聞の記事、就業者が少なく、賃金を上げるための財源もないため、「ICT化」が魔法の如くの効果を期待しているかと思うのですが、恐らく「机上の空論」のICT化をして1対4にすることで、それ(センサー装置などの類)に振り回されるスタッフは現状以上に疲弊するのがオチで、介護業界の人員不足はもっと悪化していくのだろうと思います。

*じゃあどうするの?っていう話なのですが、これは完全に個人の意見なのですが、例えば食事回数は3回(朝昼夕)が当たり前ですが、これれを2回にする、という方法はアリと思っています。午前10時頃1回、午後4時頃1回、という具合です。これがベースで、希望者には3回提供、、、みたいな感じです。
他、看護師の配置義務も「遠隔指示で対応できればOK」「要請から1時間以内に到着すればOK」や、訪問診療医の「遠隔診察OK」など、医療分野のある種権益的な部分はICTで改善できる余地が多分にあると思います。面談業務も遠隔OKにすれば、CMや相談員のあり方も変わっていくかと思います。
介護保険が出来てはや20年。既成の価値観を大胆に変更しない限り、「人員不足」「財源不足」を本当意味で乗り越えるのは難しく、ジリ貧になって皆苦しくなっていくだけだと思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

「サポレコ」管理者

介護業界に現場目線でICT化を推進するために2021年3月起業し、介護記録WEBアプリ「サポレコ」を運用しています。このページでは介護のことやICTのことについてラフな感じで記しています。

目次