介護記録の書き方

介護記録ってどうやって書けば良いのか?悩みますよね。
「変な内容であったらどうしよう?」「見当違いであったらどうしよう?」と特に経験が浅いと不安になるかと思います。

書き方を理解するには、そもそも「介護記録」がどうして必要なのか?を理解することが重要です。目的を把握することで、手段(=介護記録を記すこと)は遂行し易くなります。

目次

介護記録の目的とは?

では、「介護記録の目的」は何か?ということですが、これはズバリ「証拠」です。

法的には介護記録の定義付けはされていませんが、「サービスを提供した具体的な内容を記すこと」は介護保険法に定められています。
「指定介護老人福祉施設の人員、設備、及び運営に関する基準」第37条第2項
「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」第38条第2項
「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」第191条の3第2項
「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」第191条第2項

高齢者施設の設置・運営基準(東京都)

では、この証拠は「何の証拠のため?」となるのですが、これは、介護保険法が「提供したサービスに対して保険を支払う仕組み」であるからです。そう、介護保険からお金をもらうために証拠が必要なのです。もし、この証拠なしでお金が貰えるなら、何でもありになってしまいますね。口頭で「私は◯◯をしました」でお金を貰える仕組みは恐ろしいですよね。そうさせないためのブレーキとして、「証拠」を残すことが必要なのです。

これを踏まえて、分かり易くすると、、、
①介護記録は、提供したサービスの証拠を残すために必要。
②証拠があるから、介護保険からお金が貰える。
③逆に証拠がないと、介護保険からお金が貰えない。

ということになります。

また、介護記録を記す理由として、「自分の身を守るため」ということが言われます。これはどういうことかというと、ズバリ「裁判で証拠になる」ということです。
起きてほしくないことではありますが、利用者対応によっては残念ながら裁判で解決を図る、という場面があります(特に骨折などの事故)。裁判は一般的な社会常識と照らし合わせ、どちらに理があるか?を争うことになります。その際に重要な証拠として「介護記録」などの記録物が参照されます。この記録に不備が多々あったら、、、裁判は残念ながら、、、という結果になります。

国の見解を知る

これら「証拠」を意識して、介護記録は記していくことが求められます。では、どのような内容が良いのか?ということですが、実は裁判所が介護記録(ケース記録)について述べている判例があり、以下のように要約しています。

ア 利用者の発言のうち重要なものについては,その表現をできるだけ忠実に記録する。
イ 観察は多面的に行い,記録内容は正確に記録する。
ウ 援助過程に関する事実については,日時,場所,主体,原因等を明確に記録する。
エ 必要に応じて記録内容を,時間的経過,問題別分類,利用者の社会関係,社会資源の活用などに分けて整理し,記録する。
オ 援助の展開に直接関係のない事柄については,記録を控える。
カ 内容が的確に伝わるように,簡潔で明確な文章によって記録する。
(参照:裁判所HP判例より https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/298/015298_hanrei.pdf

分かり易そうで、分かりにくい内容ですね、、、。ただ、これを噛み砕いて解釈してみると、、、

①起きたこと(事実)を記しましょう。
②些細なことでも良いので、とりあえず起きたこと(事実)を記しましょう。
③特定できるもの(時間・場所・固有名詞など)は意識して記しましょう。
④記録は大まかであれ、種類分けして管理しましょう。
⑤主観過ぎる内容は良くないので、その場合は「推察です」など主観であることを記しましょう。
⑥抽象的表現は控え、具体的表現で記しましょう。

という感じでしょうか?で、これをさらに分かり易く噛み砕くと、、、
「起きたこと(事実)を可能な限り具体的な内容で記しましょう。」となります。

そう、記録は「証拠」であるため、「事実」であることが前提です。また、抽象的な表現より、具体的な表現で記すことが証拠として重要になってきます。

考え記すこと」に慣れていく

この「抽象的」と「具体的」の判断が難しいのですが、これは、残念ながら記録を読んでいく・記していく過程の中で自分のものにしていく他、方法が特にありません。要は「慣れていく」ことです。「固有でないもの・数字で表現できないもの」が、抽象的な表現、、、という感じでしょうか?その逆が具体的な表現となります。

ただし、あまりこれに縛られてしまい、例えば「14:00から14:30でレクリエーションのペットボトルボーリングに積極的に参加する。」という表現を「14:00からレクリエーションのペットボトルボーリングに参加。30分で15回ボールを投げる。他の参加者(3名)の平均は8回であったので、約2倍のボールを投げた。」というのは如何なものか?となります。「積極的」とは抽象的な表現ではありますが、「楽しみながら」「笑顔で」よりは具体的な感じはしますね。

この「具体的表現」の定義付けは本当に難しいのですが、これは先にも述べましたが、「慣れる」以外方法がありません。就業先によっての判断も微妙に違うでしょう。

ですので、記録方法に迷った時の思考方法としては、

①記録は証拠である。
②証拠は事実内容を記す。
③可能な限り具体的な表現を使用する。


ということを前提として、記していく習慣付けをつけていけば、自然と身についていくでしょう。そして何よりも重要なのは、記す言葉を「考えながらひねり出す」という行為です。
この行為は大変です。面倒です。苦しいです。ですが、「証拠を残す」ということは大事な仕事(=お金をもらうこと)である以上、避けて通ることはできません。
避けて通れないのであれば、もう慣れるしかありません。しかし残念ながら慣れても面倒な作業です。もう面倒なものは面倒と割り切って対応していく方が精神衛生的に楽です。

遠い未来的な想像をすれば、「全て録画」や「自動でAIによる記録」なんてことも起こるかも知れません。しかし、現状(2022年2月現在)や近未来(3年先)程度であれば、記録の様態は「サービス提供者が作成する」という形のままでしょう。

介護業務において面倒な間接業務ダントツ第1位である「介護記録」。でも、「証拠を残すため」という前提があるため、しっかりと残し管理しないといけません。面倒な業務でありますが、非常に大切な業務でもありますので、 日頃から意識して取り組みたいものです。

丁寧語・敬語は必要なのか?

よくある悩みとして「丁寧語・敬語で記すのか?」というのがあります。これは、この介護記録は家族が請求すれば見ることができる(開示請求)ことを意識すれば丁寧な言葉で、、、となりがちですが、その必要は全くありません。
不適切な表現(薬を与える・トイレに連れていくなど)は出来るだけ避けるべきですが、「座って頂く」ではなく「座ってもらう」で問題ありません。まして「お座りになる」なんて表現をする必要はなく「座る」で良いです。これらの表現方法(敬体か?常体か?)で悩むのは時間がもったいないです。管理者であるならば常体で統一させるべきかと思います。

推察を記すことも重要な業務

記録は事実を記すことが重要としながら、しかし時には推察を記す必要があります。特に事故などの時は、周りの状況から推察することも重要です。なぜならその推察から次の対応をする必要があるからです。
ですので、「◯◯の状況から、▲▲ということを推察し、□□の対応を行う」というのは、当然の流れです。推察≒主観となりますが、それがあくまで客観的事実(=状況)から推察したということを記すことが重要です。

記録を家族と共有することは重要

介護記録の扱い方として、非常に重要なのが「関係者」との共有です。そして、最も関係している方=家族との共有は非常に重要です。この「家族と介護記録の共有」がトラブルのリスクヘッジになります。
対人援助サービスである以上、トラブルは絶対に避けられません。トラブルは起きる前提で考えるべきで、そのトラブルの労力的大きさ・時間的の長さをどれだけ小さくできるか?が重要です。その有効な方法が「家族と介護記録の共有」となります。
小さなことでも良いので、定期的に、共有する回数に拘って対応するのが良いです(30分1回より、5分を5回の方がリスクヘッジになります)。
参照:ザイオンス効果(単純接触効果)とは?

*動画で説明してみました(4/16追記)

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「サポレコ」管理者

介護業界に現場目線でICT化を推進するために2021年3月起業し、介護記録WEBアプリ「サポレコ」を運用しています。このページでは介護のことやICTのことについてラフな感じで記しています。

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